最高裁判所第三小法廷 昭和31(あ)4151 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
被告人等六名の弁護人東中光雄の上告趣意第一点について。
所論は要するに原審が被告人Aを除く爾余の五名について第一審判決を量刑軽き
にすぎるとして破棄し、自ら何ら事実の取調をしないで右各被告人に不利益に刑を
変更したのは刑訴四〇〇条但書の規定に違反するものである。該規定は控訴審が破
棄自判し得ることを例外的に認めているがその場合には、殊に被告人に不利益に刑
を変更するような場合には、必ず自ら事実の取調をなすことを要する、即ちその限
りにおいて、直接審理をなし、口頭弁論を経た上でなければ許されないものである
と前提して、こと茲に出でなかつた原判決は直接審理主義、口頭弁論主義に反する
として憲法三一条、三七条違反を主張する。
記録を調べてみると原審は右五名の被告人について第一審判決を量刑軽きにすぎ
るとして破棄し、右各被告人に不利益に刑を変更していること、原審はみずから何
らの事実の取調をもなしていないことは所論のとおりである。しかし、控訴審が検
察官からの第一審判決の量刑は不当であるとの控訴趣意に基き第一審判決の量刑の
当不当を審査するにあたつては、常に控訴審みずから事実の取調をしなければなら
ないものではなく、訴訟記録及び第一審において取り調べた証拠によつてその量刑
の不当なことが認められるときは、控訴審みずから事実の取調をしないで第一審判
決の刑より重い刑を言渡しても刑訴四〇〇条但書に反するものではないこと既に当
裁判所の判例とするところである(昭和二七年(あ)第四二二三号、同三一年七月
一八日大法廷判決、集一〇巻七号一一七三頁)から、所論違法の主張は勿論、違憲
の主張も理由がないこと右判例の趣旨に徴して明らかである。
同第二点について。
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所論は違憲をいうけれども所論被告人の各自供調書が供述の任意性を欠くものと
認むべき資料は存しないので所論違憲の主張は前提を欠き理由がない。(第一、二
審判決は、被告人等の司法警察員に対する各供述調書は全部証拠として挙示してい
ない。検察官調書(被告人B、C、D三名分)を挙示しているが、これらが任意性
を欠くとは認められない。)
同第三点について。
所論は事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであつて適法な上告理由
に当らない。(原審の支持する第一審判決判示第一及び同第二事実の各関係被告人
の所為が所論の如く違法性が阻却され、乃至責任が阻却されるとは認められない。)
被告人B本人の上告趣意第一について。
所論の理由なきことは弁護人東中光雄の上告趣意第一点について述べたところに
よつて明らかである。
なお所論「公平な裁判」でないから違憲である、との非難があたらないことは、
しばしば当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判
決)に示されたところに徴して明らかである。
同第二について。
所論は憲法三八条違反をいうけれども、第一、二審判決は被告人Bの司法警察員
に対する供述調書はこれを証拠としていないし、また証人の供述その他多くの証拠
によつて事実を認定しているのであるから、所論違憲の主張は前提を欠き採用でき
ない。
同第三について。
所論は事実誤認の主張であつて適法な上告理由とならない。
被告人C本人の上告趣意について。
所論のうち原審が書面審理で第一審判決の刑よりも重い刑を被告人に言渡したの
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は、違憲、違法である旨主張する部分は、弁護人東中光雄の上告趣意第一点につい
て述べたと同じ理由によつて採用できない。爾余の論旨は憲法違反の語を用いては
いるが実質は事実誤認、量刑不当の主張をいでないものであつて適法な上告理由と
ならない。(なお、被告人等の司法警察員に対する各供述調書は任意性を欠く旨主
張するけれども第一、二審判決は、右調書を証拠として挙示してはいないこと前述
のとおりである。)
被告人D本人の上告趣意一について。
所論は弁護人東中光雄の上告趣意第一点について上に述べたと同じ理由によつて
採用できない。
同二について。
所論は事実誤認の主張に帰し適法な上告理由とならない。
被告人E本人の上告趣意第一について。
所論の理由なきことは弁護人東中光雄の上告趣意第一点について前に述べたとこ
ろによつて明らかである。
同第二について。
所論は事実誤認の主張であつて適法な上告理由とならない。(なお、司法警察員
に対する所論各供述調書は任意性がない旨主張する点があるけれども、第一、二審
判決はこれを証拠として挙示していないこと前述のとおりである。)
同第三について。
所論は量刑不当の主張に帰し適法な上告理由とならない。
被告人A本人の上告趣意について。
所論のうちには憲法三八条違反をいう点があるけれども、第一、二審判決は司法
警察員に対する所論各供述調書はこれを証拠として挙示していないし、また証人の
証言その他の多くの証拠によつて事実を認定していること上に述べたとおりである
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から、右違憲の主張はその前提を欠くものであり、爾余の論旨は事実誤認の主張で
ある。論旨は採用できない。
被告人F本人の上告趣意第一について。
所論の理由なきことは弁護人東中光雄の上告趣意第一点について前に述べたとこ
ろによつて明らかである。
同第二について。
所論は事実誤認の主張であつて適法な上告理由とならない。(なお被告人B、同
C、同Dの検察官に対する所論各供述調書が所論の如く任意性を欠くと認むべき資
料の存しないこと上述のとおりである。)
同第三について。
所論は量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。
また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
昭和三四年六月九日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 河 村 又 介
裁判官 島 保
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 高 橋 潔
裁判官 石 坂 修 一
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